第7回 不用品を買い取るという電話
新型コロナウイルスの感染防止対策で「ステイホーム」が呼びかけられ、家にいる時間を使って部屋の片づけをされたご家庭も多いのではないでしょうか。
片付けの後には不用な物が山積みになりますが、捨てるのがもったいないと思う物もありますよね。そこへタイミング良く「ご家庭内の不用品を何でも買い取ります」という電話があったら、即座にお願いしようとしてしまうかもしれません。
ある日、高齢で一人暮らしの母親宅に「食器などの不用品を買い取る」という電話があり、母親は業者の来訪を承諾しました。ところが、来訪した業者は、用意していた食器には目もくれず、「貴金属はないか。見せるだけでもいいので見せて欲しい」としつこく言うので、やむなく指輪などを見せました。すると、業者は「この指輪とネックレスを買い取る」と言って、母親の承諾もなく勝手に契約書を作成し、指輪などと引き換えにお金を置いて帰って行ったという相談事例がありました。
2013年2月に特定商取引法が改正され、自宅で業者に物品を買い取ってもらう契約の形態は「訪問購入」と定義されました。この訪問購入で特徴的なのは、事前に承諾を取り付けない、いわゆる「飛び込み勧誘」が禁止されている点です。業者が突然訪問して勧誘することはもちろんですが、先ほどの事例のように、電話で「食器を買い取る」と言って訪問したのに、その場で突然「貴金属はないか」などと、当初の話とは別の物品の売却を求めることも禁止されています。
また、訪問購入の場合には、消費者が「売り手」となりますが、消費者にはクーリング・オフが認められており、契約書面を交付された日から8日間はクーリング・オフ期間として、業者に対して物品の引き渡しを拒否することができます。
不用品を買い取るという名目で訪問する業者の本当の目的は、多くの場合、貴金属などの貴重品を買い取ることにあると思われます。コロナ禍における経済の失速により安全資産と言われる金の価格が高騰していることも背景にあり、今後も同様のトラブルが発生することが懸念されます。
断ると大声で怒鳴られて怖い思いをした、業者に見せたアクセサリー類から一番大切にしていた指輪がなくなっていたなどの相談も寄せられていますので、まずはこのような業者を絶対に家に入れないように心がけましょう。
困った時は、ひとりで悩まず、早めに消費者ホットライン「☎188」(いやや)にご相談ください。